はじめに
令和8年6月1日、令和8年度診療報酬改定がいよいよ施行されました。本体改定率は+3.09%と、令和6年度(+0.88%)と比べても大幅なプラス改定となり、物価高騰や医療従事者の賃上げへの対応が強く打ち出されています。
そんな中、医療情報システムに関連するトピックとして、特に医療DX関連の加算体系が全面的に再編され、対応できていない医療機関は算定機会を大きく失うリスクがあります。本記事では、情報システムの観点から、現場が押さえるべきポイントを整理します。
①「電子的診療情報連携体制整備加算」への移行:既存届出は使えない
医療情報システムにかかる今回の改定の最大の変更点が、この加算の新設です。
廃止:医療DX推進体制整備加算(8点)・医療情報取得加算(1〜3点)← 5月31日で終了
新設:電子的診療情報連携体制整備加算(初診:最大15点 / 入院初日:最大160点)
点数が大幅に引き上げられた一方で、既存の届出は流用できません。5月31日時点で「医療DX推進体制整備加算」を届け出ていた医療機関も、6月1日以降に新加算を算定するには改めて届出が必要です。
施設基準を満たすには、大きく以下のシステム対応が求められます。(その他の要件もあります)
オンライン資格確認の導入・運用(マイナ保険証の積極的な活用)
電子処方箋の導入(院外処方は電子処方箋または引換番号印字が原則)
電子カルテ情報共有サービスへの接続体制の整備
特に電子処方箋については、レセコンや電子カルテへの大規模な改修が必要なケースも多く、ベンダーへの早期相談が不可欠です。
②システムのバックアップ体制:入院加算の新要件
入院時の「電子的診療情報連携体制整備加算(加算1)」を算定する場合、医療情報システムのオフラインバックアップが施設基準として新たに求められます。非常時でも継続して診療を行うための最低限の情報システムとして、具体的には以下の3つが対象となっています。
電子カルテシステム
オーダリングシステム(処方・検査等)
レセプトコンピューター(レセコン)
③マイナ保険証の利用率管理:レセコン設定の見直しを
新加算の点数区分は、マイナ保険証の利用実績によって変動します。適用月の3か月前のレセプト件数ベースで判定されるため、今月の利用促進が3か月後の算定点数に直結します。
スタッフへのマイナ保険証の利用を前提とした運用指導とあわせて誤った実績に基づいて算定をしないようにシステム設定の確認を行いましょう。
④AIやICTの活用が「人員要件の緩和」に直結
今回の改定では、看護配置基準の柔軟化や医師事務作業補助体制の評価見直しにより、ICT・AIの活用が人員要件の緩和や高い点数区分の維持に直結する仕組みへと変化しています。
電子カルテへのAI入力補助、音声認識による診療録作成、自動問診システムの導入など、これまで「便利なオプション」だったツールが、今後は「加算要件を支える基盤」として機能します。DX投資の優先順位を改めて見直す時期です。
なお、その考え方は例えば、一旦、数か月人員の基準を満たした後にICT・AIの活用により人員が減った場合に適用できるといった複雑な考え方になっている箇所もあるため、慎重な検討が必要です。
まとめ
今回の改定は、診療報酬の「収益増」と「DX投資」が表裏一体になっています。システム対応の遅れは、直接的な収益機会の損失につながります。今後、医療情報システムによるDX化の流れは後退することはありえません。一つひとつ着実に対応を進めていきましょう。
なお、本記事は令和8年6月1日時点の情報をもとに作成しています。疑義解釈資料等により内容が更新される場合がありますので、厚生労働省の公式資料も併せてご確認ください。
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