「システム開発と著作権」の基本①

システム開発の現場では、納品されたプログラムやドキュメントの著作権を巡ってトラブルになるケースが少なくありません。「お金を払って発注したのだから著作権も当然自分のもの」と考える発注者の方が多く、これに対応する受注者も理解が不足しており、「正直、良くわからない」状態です。今回は著作権の基礎知識を解説します。

そもそも「著作権」とは何か

著作権法上、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法第2条第1項第1号)。ポイントは、①思想・感情の表現であること(単なる事実やデータではない)、②創作性があること(個性が表れていること)、③「表現」自体が対象であること(アイデアそのものは含まれない)の3点です。

この要件を満たして初めて「著作物性」が認められ、著作権法の保護を受けられます。逆に、どれだけ手間をかけても、著作物性がなければ保護は及びません。

プログラムに著作物性が認められる理由

プログラムは一見「文芸、学術、美術又は音楽」に当てはまらなさそうですが、著作権法はプログラムの著作物を明文で例示しており(著作権法第10条第1項第9号)、保護の対象とされています。ポイントは、ソースコードに「創作的な表現」が認められるかどうかです。同じ機能を実現する場合でも、変数名の付け方や処理の分岐の組み立て方には工夫の余地があり、そこに個性が表れていれば著作物性が認められます。一方、誰が書いても同じになるようなありふれた記述には創作性が認められません。

ただし、プログラムが実現するアイデアやアルゴリズムそのもの(処理のロジック)は著作権の保護対象にはなりません。保護されるのは、あくまでそれを実現するために書かれた「ソースコードという表現」である点に注意が必要です。

システム開発に関わる著作物の種類

システム開発では、主に次のようなものが著作物として保護の対象になります。ただし、下記すべてが保護の対象となるわけではなく、個別に著作物性が判断されます。

プログラムの著作物:ソースコードそのもの
データベースの著作物:情報の選択や体系的な構成に創作性があるデータベース
言語の著作物:仕様書、設計書、マニュアルなどのドキュメント類
図形の著作物:画面デザインや図表など

著作権はいつ生まれるのか

著作権は、特許権や商標権のように「登録」して初めて発生する権利ではありません。著作物を創作した時点で、自動的に発生します。これを「無方式主義」と呼びます。つまり、プログラマーがコードを書き上げた瞬間に、そのソースコードには著作権が発生しているのです。

誰が著作権者になるのか

原則として、著作権は実際に創作行為を行った者に帰属します。ここが発注者にとって最も見落としやすいポイントです。次のような場合には例外があります。

職務著作(法人著作):会社の従業員が、会社の発意に基づき、職務上作成したプログラム等については、契約や勤務規則に別段の定めがない限り、法人(会社)が著作者となります。
契約による譲渡:個人事業主やフリーランス、外部の開発会社に委託した場合は、原則としてその受注者(個人または会社)に著作権が帰属します。発注者に著作権を移したい場合は、契約書で明確に著作権譲渡の合意をする必要があります。

つまり、何も契約書に定めがなければ、多くの場合、著作権は「作った側」に残るということです。発注者としては、発注した業務による成果物の著作権が欲しいと業務委託契約や請負契約の中で著作権の帰属について明記しているかどうかを必ず確認する必要があります。

著作権の有無による違い

もっとも、著作権が受注者側に残っていても、発注者が納品されたシステムを利用できなくなるわけではありません。発注者は開発費用を支払ってシステムの開発を委託しており、その契約の趣旨からすれば、少なくとも「当初想定していた目的の範囲内でシステムを使用する権利(利用許諾)」は当然に有していると解されます。著作権の帰属と、成果物を使えるかどうかは別の問題であり、著作権がなくても業務でシステムを使うこと自体は通常問題ありません。

一方で、著作権(特に複製権・翻案権)が発注者に移転していない場合、次のようなことは受注者の許諾なしにはできません。

・ソースコードを改変・カスタマイズすること
・システムを第三者に販売したり、他社にライセンス提供したりすること
・ソースコードを別のシステムに流用すること

「使える」ことと「自由に改変・転用できる」ことの間には差がある点に注意が必要です。

まとめ

今回は、著作権の種類、発生のタイミング、権利の帰属、そして著作権がなくても成果物を利用できることについてご説明しました。次回は、発注者・受注者・再委託先という3つの立場の間で実際にどのようなトラブルが起こりやすいのか、そして著作権を守るための制度についてご紹介します。

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