前回は通常枠で導入できるツールをご紹介しました。今回はインボイス枠とセキュリティ対策推進枠に絞って解説します。インボイスにセキュリティとどちらも全ての企業に必要な事項です。
インボイス枠:請求・受発注まわりのデジタル化に集中投資
インボイス制度への対応を軸に、請求・会計・受発注業務のデジタル化を進めたい事業者向けの枠です。通常枠との最大の違いは、ソフトウェアだけでなくハードウェアも補助対象になる点です。
対象となるソフトウェアは、インボイス制度に対応した会計ソフト・請求書発行ソフト(マネーフォワードクラウド請求書、Misocaなど)、受発注ソフト、決済ソフトです。さらにこの枠では、PC・タブレット・スキャナー・複合機・レジ・券売機といったハードウェアも補助対象となります。「ソフトを入れたいが、パソコンも古くて動作が不安…」という場合でも、端末ごと一括で整備できるのがこの枠の利点です。
補助率は50万円以下の部分について中小企業3/4以内・小規模事業者4/5以内と手厚く設定されており、インボイスへの対応を強く後押しする設計になっています。
電子取引類型は、ツールを実際に使う企業ではなく「発注する側」の企業が申請者となる、少し特殊な枠です。発注企業が受発注システムを導入し、取引先(受注側企業)にそのアカウントを無償で提供することで、取引関係全体を電子化するという仕組みです。受注側企業は費用負担も申請作業も発生しません。
たとえば、メーカーが下請けの取引先数十社にFAX・電話でのやり取りをやめてもらい、共通の受発注クラウドシステムに移行させたい——といったケースが典型例です。自社が起点となって取引先全体のペーパーレス化を進めたい発注企業に向いた枠といえます。クラウド利用料は最大2年分が補助対象です。
セキュリティ対策推進枠:「後回し」にしてきた対策をこの機会に
近年、中小企業を狙ったサイバー攻撃が急増しています。この枠はIPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスが対象で、補助額は5万円から150万円まで(小規模事業者は補助率2/3以内)です。
ここで注意したいのは、EDRやUTMといった製品を単体で選んで導入する枠ではないという点です。補助対象となるのは、ネットワーク監視・端末監視・相談窓口・初動対応支援・簡易サイバー保険などをひとつにまとめた「お助け隊サービス」というパッケージです。
パッケージに含まれているセキュリティツールの具体例
- エンドポイントセキュリティ(ウイルス対策・EDR)
PCやスマートフォンへの不正アクセス・マルウェア感染を検知・防御するツールです。PC、スマートフォンが外部からの攻撃の入口になるケースが多く、最低限整備しておきたい対策の筆頭です。
- ネットワーク監視・UTM(統合脅威管理)
社内ネットワーク全体を監視し、不審な通信を検知・遮断するシステムです。社外からVPNでアクセスする機会が増えた現在、特に重要性が高まっています。
- メールセキュリティ
フィッシングメールや不正な添付ファイルを自動でフィルタリングするサービスです。標的型攻撃メールによる被害は中小企業でも増加しており、入口対策として効果的です。
- セキュリティ診断サービス
自社のシステムや運用に潜む脆弱性を専門家が診断するサービスも対象です。「どこにリスクがあるかわからない」という企業の現状把握にも活用できます。
取引先や大手企業から情報セキュリティ対策の実施が取引の前提とされる機会も増えています。この枠を活用してセキュリティ環境を整備することは、事業継続の観点だけでなく、取引先との信頼関係を守るうえでも意義があります。
「何を解決したいか」から逆算して枠を選ぶ
2回にわたって補助金で導入できるツールをご紹介してきました。通常枠・インボイス枠・セキュリティ枠、それぞれ対象領域は異なりますが、共通して大切なのは「ツールありき、補助金ありきで考えない」ことです。
補助金=税金です。説得力ある計画にするためには、自社業務のどこに時間やコストがかかっているかを整理し、そこにフィットするツールと枠を選ぶことが必要です。
※補助対象ツールは時期により変動します。最新情報は公式のITツール検索でご確認ください。
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