はじめに
以前の記事で労働者派遣事業について解説しました。今回はそれと少し似ている「有料職業紹介事業」について、制度の概要と許可取得のポイント、および許可事業者が押さえておくべき注意事項をご説明します。
有料職業紹介事業とは
職業安定法に基づき、求人者(企業)と求職者(労働者)の間で雇用関係が成立するようあっせんを行い、その対価として手数料を受け取る事業です。いわゆる「人材紹介会社」がこれに当たります。営利目的かどうかにかかわらず、職業紹介に対して何らかの対価を徴収する事業はすべて該当します。
労働者派遣事業との大きな違いは、雇用契約が求人企業と労働者の間で直接結ばれる点です。派遣は雇用元(派遣会社)が労働者を雇用したまま他社へ送り出す形ですが、職業紹介はあくまで「橋渡し」にとどまります。労働者派遣事業については別記事で解説しています。
許可制度の概要
有料職業紹介事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法第30条)。許可の有効期間は新規3年、更新後は5年で、期間満了前の更新申請が必要です。許可を受けた事業者には許可番号が付与されます。また、労働者派遣事業と同様に厚生労働省の「人材サービス総合サイト」(https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/JinzaiWeb/GICB101010.do?action=initDisp&screenId=GICB101010)に掲載されます。
なお、港湾運送業務・建設業務への職業紹介は法律で禁止されています。
許可を受けるための主な要件
許可を受けるためには種々の条件がありますが、特徴的なものとしては、次の3つです。
・財産的基礎として、基準資産額が事業所1か所につき500万円以上、自己名義の現金・預貯金が150万円以上あること。事業所が複数の場合はそれぞれ加算されます。
・個人情報の適正管理、管理規程の整備・担当者範囲の明確化・苦情処理体制の構築され、事業所は求職者のプライバシーが保護できる位置・構造・設備を有していること。
・事業所ごとに、成年に達した後3年以上の職業経験があり、そして許可申請受理日から遡って5年以内に職業紹介責任者講習を修了している職業紹介責任者を選任すること。
許可事業者が押さえておくべきポイント
事業を実施するにあたって特に注意すべき点は以下のとおりです。
①違約金等の明示義務 求人者が負担する違約金その他の金銭について、金額・発生条件・解除方法を書面または電子メールであらかじめ明示することが義務化されました。「ホームページ上でスクロール確認させ同意ボタンを押させるだけ」の方法は不十分とされており、対面なら書面の手交、非対面なら書面・メールの送付が基本です。
②平均手数料率の情報開示 業務提携先に対して「取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率」の明示が必要になりました。透明性確保の観点から、手数料に関する情報開示がより厳しく求められています。
③転職勧奨・お祝い金の禁止 紹介による就職者(無期雇用)への就職後2年間の転職勧奨、および「お祝い金」等の名目による過度な金銭提供は禁止されており、許可条件にも明記されています。違反した場合は許可取消しの対象となります。
④返戻金制度 就職後短期間で離職した場合に手数料を返金する返戻金制度を設けることが望ましいとされています。また制度の有無・内容は求人者・求職者に対して明示する義務があります。利用企業が当然確認するポイントですので、運営状況を今一度ご確認ください。
まとめ
有料職業紹介事業は許可制であり、財産要件・個人情報管理・事業所要件を満たす必要があります。近年、制度改正が続いており、令和8年5月にも業務運営要領が改訂されています。許可をお持ちの事業者の方も、最新の要領に基づいた運営が求められますので、内容をご確認のうえ、運営体制の見直しをお勧めします。
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